RAGとは何か?
RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、大規模言語モデル(LLM)の生成能力を外部知識で強化する手法です。
主な特徴
- クエリに関連する情報を外部ソースから検索
- 検索結果をLLMの入力に追加してコンテキストを強化
- 最新かつ正確な情報に基づいた回答生成
- 幻覚(ハルシネーション)を低減
従来のLLMとの違い
事前学習した知識のみを使用
情報が古くなりやすい
事実の根拠を示しづらい
外部知識を都度参照
最新情報へアクセス可能
情報ソースをトレース可能
RAGの利点
精度向上
- 事実に基づいた正確な回答を生成
- ドメイン固有の専門情報を反映
- 出典や根拠を提示可能
最新情報へのアクセス
- モデルの学習データ以降の新しい情報を活用
- データベースやドキュメントの更新を即時反映
透明性と説明可能性
回答の情報源を明確に示すことで信頼性向上
RAGの仕組み
クエリ
検索
拡張
生成
1. ユーザークエリ処理
ユーザーからの質問や指示を受け取り、検索クエリに変換します。
2. 関連情報の検索
変換されたクエリを使用して、ベクトルデータベースや他の情報源から関連情報を検索します。
3. プロンプトの拡張
取得した関連情報を元のクエリと統合し、コンテキスト情報が豊富なプロンプトを作成します。
4. 回答の生成
拡張されたプロンプトをLLMに送信し、高品質な回答を生成します。
RAGの主要コンポーネント
1. ドキュメント処理
- テキスト抽出: PDFやWebページからテキストを抽出
- チャンキング: 大きなテキストを管理可能なサイズに分割
- 前処理: クリーニング、正規化、フィルタリング
2. エンベディング生成
テキストチャンクを数値ベクトル(埋め込み)に変換
3. ベクトルデータベース
生成した埋め込みを効率的に格納・検索するためのデータベース
4. 検索エンジン
類似性検索を実行し、最も関連性の高い情報を取得
5. LLM生成モデル
検索結果をコンテキストとして使用して最終回答を生成
実装のベストプラクティス
効果的なチャンキング戦略
ドキュメントを意味のある単位に分割することで検索精度を向上させる
- 適切なチャンクサイズ(通常512〜1024トークン)
- 意味的なまとまりを保持
- オーバーラップを考慮(10〜20%)
メタデータと検索フィルター
ドキュメントにメタデータ(日付、著者、カテゴリなど)を追加
検索クエリにフィルターを適用して関連性を向上
リランキングとフィルタリング
初期検索結果を再ランク付けして最も関連性の高い情報を優先
- BM25などの従来手法との組み合わせ
- Cross-Encoder再ランキング
プロンプトエンジニアリング
LLMに明確な指示を提供するプロンプトテンプレートの作成
一般的な応用例
カスタムナレッジベース
企業固有の社内ドキュメントに基づくQ&Aシステム
インテリジェントサーチ
自然言語での検索と情報要約を組み合わせた高度な検索体験
ドキュメント分析
大量の法律文書や契約書からの情報抽出と分析
パーソナライズされた推薦
ユーザーの過去の活動に基づくコンテンツ推奨
サポートの自動化
製品マニュアルやFAQに基づくカスタマーサポートの強化
教育・学習支援
教材に基づいたパーソナライズされた学習支援と解説
研究・文献調査
学術論文や研究文献からの情報収集と要約
今後の展望
マルチモーダルRAG
テキストだけでなく画像・音声・動画などのデータを組み合わせたRAG
適応型RAG
ユーザーのフィードバックに基づいて自動的に改善するシステム
分散RAG
複数の知識源を効率的に活用する分散アーキテクチャ