ウォータフォール開発モデルチートシート

段階的開発プロセスの体系的解説

2025年3月30日

ウォータフォールモデルとは

  • 開発工程を明確なフェーズに分割
  • 各フェーズは順次進行し前工程の完了が必須
  • 各フェーズの終了時に正式な承認と文書化
  • 計画駆動型のシステム開発アプローチ
  • 1970年代のWinston W. Royceの論文で体系化
要件定義

システムが何をすべきかを明確に定義

設計

要件を満たすシステム構造の設計

実装(開発)

設計に基づいたコーディング

テスト

要件と設計に対する検証

導入

本番環境への展開

保守・運用

システムの維持と必要な修正

各フェーズはウォーターフォール(滝)のように一方向に流れることが特徴。基本的に後戻りはしない前提の開発モデル。

要件定義フェーズ

  • 機能要件の詳細化と文書化
  • 非機能要件(性能、セキュリティ、拡張性)
  • ステークホルダーとの要件合意
  • 要件仕様書の作成と承認
  • 変更管理計画の策定
主要成果物
要件仕様書(SRS)
ユースケース図
業務フロー図
システム制約事項一覧
フェーズ完了基準:要件仕様書の正式承認
このフェーズでの要件の見落とし誤解は後工程で大きなコスト増に繋がるため、徹底的な分析と文書化が重要。
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設計フェーズ

  • アーキテクチャ設計(全体構造)
  • 詳細設計(モジュール、コンポーネント)
  • データベース設計(ERD、正規化)
  • UI/UX設計(画面レイアウト、遷移図)
  • 外部インターフェース設計
主要成果物
アーキテクチャ設計書
詳細設計書
ER図・テーブル定義書
画面設計書・画面遷移図
フェーズ完了基準:設計書の正式承認
設計フェーズでは要件を実現する具体的な方法を明確にし、開発チームが正確に実装できるレベルまで詳細化する。
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実装(開発)フェーズ

  • 設計書に基づいたコーディング
  • コーディング規約の遵守
  • 単体テスト計画と実施
  • コードレビューの実施
  • バグ修正と品質確保
主要成果物
ソースコード
単体テスト仕様書・結果報告書
コードレビュー記録
ビルド手順書
フェーズ完了基準:単体テスト完了と品質基準達成
実装フェーズでは設計に忠実なコーディング単体レベルでの品質確保に注力する。
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テストフェーズ

  • 結合テスト(モジュール間連携)
  • システムテスト(全体機能)
  • 受入テスト(要件検証)
  • 非機能テスト(性能、セキュリティ)
  • テスト結果の文書化と承認
主要成果物
テスト計画書
テストケース・シナリオ
テスト結果報告書
不具合管理表
フェーズ完了基準:全テスト完了と受入基準達成
テストフェーズでは要件仕様書に対する適合性を厳格に検証し、本番環境への展開可否を判断する。
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導入(リリース)フェーズ

  • リリース計画の作成と実行
  • データ移行と整合性確認
  • 本番環境構築と設定
  • ユーザーマニュアル整備
  • ユーザートレーニングの実施
主要成果物
リリース計画書
データ移行手順書・結果報告書
ユーザーマニュアル
トレーニング資料
フェーズ完了基準:本番環境での稼働開始
リリースフェーズではシステムの円滑な移行ユーザーの受入準備が重要。本番環境への影響を最小限に抑える計画が必須。
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保守・運用フェーズ

  • 正常運用の確認と監視
  • 障害対応と復旧手順
  • パフォーマンスモニタリング
  • 小規模な修正と機能追加
  • 定期メンテナンス計画
主要成果物
運用手順書
障害対応マニュアル
定期点検記録
変更要求管理表
フェーズ完了基準:安定稼働の確立
保守・運用フェーズはシステムライフサイクルの最も長い期間。総コストの60-80%が発生するフェーズでもある。

ウォータフォール vs アジャイル

特性 ウォータフォール アジャイル
アプローチ 順次的・計画駆動 反復的・適応型
要件変更 厳格な変更管理 柔軟に対応
納品形態 一括納品 反復的な部分納品
ドキュメント 詳細かつ包括的 最小限・必要十分
顧客関与 主に計画時と納品時 全工程で継続的に関与
リスク対応 事前予測と計画 早期発見と対応

ウォータフォールの長所

  • 目標と計画が明確
  • 包括的な文書化
  • 明確なマイルストーン
  • 進捗管理がしやすい

ウォータフォールの短所

  • 要件変更への柔軟性低
  • 問題発見が遅れる可能性
  • 顧客フィードバックの遅延
  • リスクが後工程に集中
ウォータフォールは要件が明確で安定している場合や厳格な規制対象のシステム開発に適しています。

ウォータフォール開発ツール

  • プロジェクト管理: Microsoft Project, Redmine
  • 要件管理: IBM Rational DOORS, ReqView
  • 設計ツール: Enterprise Architect, Visio
  • テスト管理: HP ALM, TestRail
  • 文書管理: Confluence, SharePoint
  • 品質管理: SonarQube, Fortify
重要指標: 計画からの逸脱率、バグ発生率、工数消費率
ドキュメントテンプレート
IEEE 830(要件仕様書)
IEEE 1016(設計文書)
IEEE 829(テスト文書)
ISO/IEC 25010(品質モデル)
ウォータフォール開発では文書作成支援厳格な進捗管理ができるツールの選定が重要です。